第四話「ヒトノカタチシタ、ヒカリ」（中編）
〜ハンバーガーショップ〜
どうする？
・注文する
・注文しないで出る
→・注文する
幸助「すみませ〜ん♪てりやきバーガー５個とチキンサンドを３つ、あとポテトのＬサイズとナゲットを！ドリンクはコーラで！！」
店員「かしこまりましたー」
平然としたまま注文を奥に告げる
そして、運ばれてくる商品。
店員「割引クーポンはお使いですか？」
幸助「いや、持ってないです」
店員「そうですか」
そうすると、幸助の次に入ってきたデブの熊族の男が、札束みたいになったクーポンを出して注文を始めた
幸助「……うっわ」
？？？「ハンバーガー類を３つづつ。ポテトＬを５、ドリンクをコーラで３、ナゲットを５、アップルパイとミートパイを５、それから……」
幸助「な、何ぃ！？」
熊男（きっと会社の人の分とか頼まれてるんだ、でなきゃあんな数……）
店員「お持ち帰りですか？」
？？？「いえ、食べて行きます」
幸助「うそぉ！？」
ちなみに、男は使わなかったチケットを戻して、手近な椅子に腰掛けた
そして、ものすごい勢いで食べ始める
幸助「…………」
幸助は自分の分を食べるのも忘れて、大口を開けてその様子を眺める他なかった
熊族の男は、見る見るうちに腹の中に食い物を収めて、げぷっと一息つく
もともとはぶよっとしていた腹も、内側の圧力でぽっこりと膨らんで、倍近いボリュームになっている
幸助「あ、あの……」
幸助は思わず声をかけた
熊男「はい？」
幸助「すごく食べるんですねぇ……オレびっくりしちゃった」
熊男「あー、そうですね。なんか、最近腹減って」
幸助「ん、最近っすか」
熊男「ゲームにはまって寝る時間も無くてさ。つい、飯抜きとかするし。ホントは出前システムも導入したいけど、まだ金もレベルもたんないし」
幸助「……あの、もしかしてそのゲームって……」
熊男「ｄｓｍっていうんだけど、知ってる？」
幸助「知ってるも何も！あのゲームやった人ってみんなおかしくなっちゃうじゃないですか！」
熊男はそれまで温厚そうだった表情を一転させ、ぎろり、と幸助をにらんだ
熊男「おまえ、今なんつった？」
幸助「え……あのゲームやった人はおかしく……」
熊男は無言で幸助の胸倉をつかんで盛り上げた
熊男「お前、お前！！ 取り消せ！」
幸助「なっ……！何すんだよいきなりっ！！」
急激に首が締め上げられて、意識が遠くなる
幸助「ぐっ……！」
どうする？
・もがく
・叫ぶ
・引っかく
→・もがく
幸助「は……離せっ、この……！！」
熊男「お前、あれは面白いゲームなんだ！ 取り消せ！」
ちっとも熊男の力は緩まない。どんどん意識が遠くなっていく
幸助「うっ……」
どうする？
・誰かに助けを求める
・何とかする
・……何もできない、思わず意識が遠のく
→・誰かに助けを求める
幸助「だっ……誰かっ……」
心臓の鼓動だけが妙に高鳴り、音と光が遠ざかっていく
熊男「取り消せ！ この野郎！」
熊男のギラギラした瞳が幸助の視界一杯に広がる
幸助（だめ……だ……シンヤ、ごめん…………）
慎哉「やめろぉっ！！」
凄い衝撃と共に熊男が吹き飛ばされる。もちろん、幸助も一緒に
慎哉「コースケ！！」
幸助「がっ……げほっ……！！し……シンヤぁ……！？」
慎哉「立てるか！？」
幸助「うん、なんとか……」
頷くと、慎哉は幸助の腕を引いて店の外へ飛び出す。熊男の方はよろめきながらもこっちに向かって走ってきた
慎哉「早く！ コースケ！」
幸助「う、うんっ！！」
しかし、どんどん熊男との距離が縮んでいく。幸助の足はがくがくとして頼りない
幸助「シンヤ、オレはいいから逃げて！」
慎哉「バカヤロウ！ そんなことできるわけ無いだろ！！」
慎哉は幸助を抱えてぎゅっと抱きしめる
幸助「でも……オレ……一人で出しゃばって、シンヤに迷惑かけっぱなしで……」
慎哉「俺が食い止めるから、逃げろ！」
幸助「シンヤっ！？」
どん、と突き飛ばされて、慎哉の背中が幸助の目の前に広がる
幸助「くっ……！！」
ここで自分がでしゃばったせいで、慎哉を結果的に巻き込んでしまったことが耐えられなかった
よろめく足を、なんとか踏ん張って慎哉の肩を掴む
幸助「わあぁぁあぁあぁっ！！！」
幸助はそのまま慎哉を払いのけ、熊男にがむしゃらに突進を仕掛けた
じゃきん！
その、妙な音と共に、幸助の目の前に迫っていた熊男の圧力が急に消えた
幸助「……っ！？」
継子「あなたは何をやっているの？」
いつの間にか、あの猫族の少女が目の前に立っていた
幸助「か……桂木……継子……」
継子「彼は、新しい「えにし」に繋いだわ。もう、あなたの目の前には姿を現さない」
幸助「……」
幸助はがくっ、と膝を落として、力なく継子を見上げた
継子「あなたは<ゆめかり>でもなんでもないのよ。ゆめおいびとに侵された人に、今のあなたは何の対抗手段もない」
幸助「……オレ……ほんと、何やってんだよ……」
自嘲するように、か細く笑った
幸助「たぶんオレ、どこかで自分が特別なんじゃないかって期待してた。それでシンヤも遠ざけて、一人で気取って･･･結局このザマだよ……」
継子「そうね。今のあなたは話にならないわ。ただ振り回されて、流されているだけ」
継子の言葉には容赦も情けもない。ただ告げられる冷徹な事実に、幸助は苛立ちを覚えた
幸助「だったら……！！キミのその力で、オレを元通りの生活に戻してくれよ！！ゆめかりも何も知ったこっちゃない！！」
継子「あなたは、いつまでそんな気でいるの。もう、後に戻る道なんて無いのよ。後戻りできる選択肢を選んで、安全圏に自分をおけばそれですむの？」
継子の顔は、奇妙なほどの憎悪が浮かんでいる
幸助「知るかよ、そんなこと……オレがいったい何だってんだよぉ……」
継子「あなたは何も知らない。それが、罪になることもあるのよ」
慎哉「さっきから、あんた一体なんなんだよ！」
堪りかねて、慎哉が声を上げた
慎哉「こいつの、何がわるいってんだよ。こいつは、凄いいい奴で、そんで、俺の友達だ！」
幸助「……シンヤ……」
継子「……<ゆめかり>を得たいなら、心の底から願うこと。
確かに、あなたは特別だわ。でも、それを自覚して願い、動かなければ、それは実体にはならない
<ゆめかり>は意志の具現そのもの。強い意志、切り開く心の強さ。
誰に頼ることなく、自分の力で切り開く意志の具現、そしてさきみたまを癒す思い。それが<ゆめかり>」
継子は二人の感情を無視するかのように淡々と言葉を並べ、最後に一つ、念を押すように付け足した
継子「……フィーダーは、もうあなたを見つけているわ」
幸助「え……？」
継子「全ては偶然ではなく、必然。あの熊男が、偶然あなたの目の前に現れたと思ったの？」
幸助「まさか、最初からオレを狙って……？」
継子「この次は助けないわ。あなたの力がホンモノかどうか、見極めるつもりだから」
継子は冷たい視線を投げて、去っていった。
幸助「……オレ、どうすりゃいいんだよ……」
慎哉「コースケ……」
〜慎哉の家・夜〜
慎哉に促されるまま、幸助は慎哉の家に泊まることになった
慎哉「こうなってくると、お前の母ちゃんがいなくて本当に良かったな」
幸助「なぁ、シンヤ……？」
慎哉「……ん？」
幸助「なんでオレがあそこにいるって……」
慎哉「お前のピンチに駆けつけるのが、俺の役目だからさ！」
幸助「言ってて恥ずかしくないか、それ……」
慎哉「なーんて、言えればかっこいいんだけどな。……ホントは、あの猫族の女の子に、案内してもらった」
幸助「え……継子に？」
慎哉「うん。『あなたの「えにし」をつなぎに来た』とか言われて、はぁ？ とか思ったんだけどさ。気が付いたらお前がピンチのシーンに出くわして、で体当たりかましたわけ」
幸助「そっか。やっぱオレ、一人じゃダメダメだなぁ……」
慎哉「あったりまえだろ！」
ぺしっ、と幸助の頭を軽く叩く
幸助「あうっ！」
慎哉「ゆめかりとかなんとか、よくわかんねぇけどな。お前はコースケだろ！ドジで大食いで、いっつもほにゃっとして」
幸助「……！」
慎哉「んでも、ちゃんとやることはやる、俺の一番の、友達だろうが」
幸助「……シンヤ……昨日のこと、ちゃんと謝ってなかったっけ……ごめん」
慎哉「よし。許してやろう」
幸助「あ、じゃあついでにさ」
慎哉「ん？」
幸助「シンヤが大事に取っておいたイチゴショート、勝手に食べたの、親父さんじゃなくてオレ……」
慎哉「（ぶちっ）……こーおーすーけー……」
幸助「うぁ！許してくれるって言ったじゃん……！」
慎哉「殺ス！」
幸助「わはぁあぁぁぁっ！！」
慎哉「くらえっ！ 腹もみもみの刑っ！！」
幸助「や、やめぃ！くすぐったいっての！！うひゃぁぁんっ！」
慎哉「許さん！ 慎哉ブリーカー！ 死ねぇっ！！」（ぎりぎｒ）
幸助「だ〜〜ず〜〜げ〜〜で〜〜〜！！」
〜その後（笑）〜
慎哉「とにかく、もう一人で行動するなんて、無茶はやめろよ？」
幸助「うん、ごめん……」
慎哉「とにかく、今日は寝ようぜ」
幸助「だな♪」
どうする？
・本当に寝る
・……でも、やっぱり自分でけりをつける
→・本当に寝る
幸助「ｚｚｚ……」
〜？？？〜
＜こうすけ＞
幸助「いや！ハンバーガーはもう見たくない！！むにゃむにゃ」
＜こうすけ＞
幸助「フライドチキンなら……ん……んぁ？」
＜こうすけ、ぼくが、わかる？＞
幸助「腹の……虫？」
＜きみは、ぼくが、ひつよう？＞
幸助「え……」
＜きみのこころは、いま、ゆらいでいる＞
＜ぼくとともにあるうんめいを、おそれている＞
＜だから、あのときも、ぼくはきみのちからになれなかった＞
幸助「……一から十まで説明しろって言っても、無理なんだろ？やっぱ……」
＜ごめんね＞
＜みちは、あくまであるいてりかいするものだから＞
＜でも、ひとつだけ＞
＜ほんとうに、ぼくがひつようなら＞
＜ぼくに「な」と「すがた」をあたえて＞
幸助「名前と、姿？」
＜きみののぞむすがたは、ぼくのちからになる＞
＜かのじょは、えにしときずなで、さきみたまを「ゆめかり」にした＞
＜かのじょのちからは、「えにしをつなぐ」＞
＜こうすけ＞
＜きみがぼくにのぞむことが、ぼくのちからになる＞
＜ぼくのちからがほしいときは、なをよんで＞
＜ぼくの、ほんとうの、きみがのぞむ、なまえを＞
幸助「……正直、まだ戸惑ってるよ。でも、きっとまた騒動が起きるんだろ？」
＜そうだね。きみはもう、しられてしまったから＞
幸助「その時、オレがまだ迷ってたら？」
＜きみは、もっともたいせつなものを、うしなうだろう＞
幸助「……守りたい。今はそう思うけど、わかんないや」
＜ゆめかりは、かんぜんなこころにはやどらない＞
＜ゆめかりは、そうありたいとねがうこころにやどるものだ＞
＜それを、わすれないで＞
幸助「うん……」
そこで、夢は途絶えた
〜朝〜
慎哉「おっはよ」
幸助「うぃ、おはよ〜」
慎哉「さて、どーする？ 早速いくか！？」
幸助「いくって、どこへ？」
見ると、慎哉はいつの間にか着替えていて、金属バットやらなにやらで武装している
幸助「って……」
慎哉「決まってるだろ。例のゲーム会社だよ」
幸助「そんな格好してたら辿りつく前に補導されます。はいはい、いらんものは置いていく」
幸助は呆れた顔でポイポイっと、慎哉の身ぐるみを剥いでいく
慎哉「ああっ、慎哉スペシャルのチタンヘッドドライバーがー！」
幸助「別にケンカ目的じゃないんだか〜ね！！」
慎哉「えー、でもさ、昨日の熊みたいなのが出たらどーすんだよ」
幸助「それは……逃げる？」
慎哉「侵入いみねーな」
幸助「じゃあシンヤでも囮にするか♪」
慎哉「……（無言でうらめしそうな顔をする）」
幸助「じょ、ジョーダンだよぉ！とにかく、出たら出たでその時考えようよ」
慎哉「……でも、ほんとにいざとなったら、俺をおとりにしていいからな」
幸助「ばか」
〜株式会社フィーダービル前〜
慎哉「儲かってるって話だったんだけど、意外と安っちぃビルだなぁ」
フィーダーは、雑居ビルの一部を借りて運営されているらしい
幸助「ケチなんでしょ、貯め込んでるんだよ」
慎哉「俺ならこう、どーんと！ ヒルズに会社を入れるけどな〜」
幸助「捕らぬタヌキのなんとやら……」
慎哉「じゃ、ここで狸捕獲っ！」（むぎゅ）
幸助「きゃうん♪……って、んなことしてる場合かっ！」（ぺし）
慎哉「あう。……で、どうする、真面目な話」
幸助「ほら、インターホン鳴らしてお邪魔しまーすって」
慎哉「お前、心底アホだなー。こういう時は、なんかこう、美味い具合にこそこそっと侵入する方法を……」
幸助「こそこそできるような体格でもあるまいし……第一こんな狭いビルのどこに身を隠せるのさ」
慎哉「……おい、こーすけ……」
幸助「ふぁ？」
慎哉「あ、あれ……」
幸助「なに？」
指差した道の先に、なんだか凄い図体の一団が、こちらに向かってくるのが見える
慎哉「や、やばっ！」
幸助「こっち来てる〜〜！！」
慎哉「どうする！？」
・隠れる
・ビルの中へGO！
→・ビルの中へGO！
幸助「ええぃ、もうっ！！シンヤ！！」
幸助は慎哉の手を引き、半ばヤケクソにビルの中に飛び込んだ
慎哉「うひゃああっ！！？」