〜某所 某日〜

その男は、モニターを見つめていた。
薄暗い部屋の中、時々気味の悪い笑いを喉の奥から漏らしながら

???「ひひ、まただ、また儲かったぞぉ、ひひひ」

時々、かさかさと音を立てて、部屋の中を小さな者が這いずり回っているが、彼は気にした様子も無い。静かにパソコンのファンが回り、かすかにマウスをクリックする音だけがアクセントに挿し挟まれた

???「そうだ、それでいいんだぁ。もっと、もっと、もっと儲かれ……えひひひ」

眼鏡をかけた顔はごっそりと頬がこけ落ち、血走った目がモニターを見つめる
その時、男は何かに気が付いて、画面をもう一度見直した

???「誰だ、こいつは……くそっ、俺を、俺様を邪魔する奴は、絶対に許さん!」

男は狂ったようにキーボードを叩き、再びくぐもった笑いを漏らした

???「俺が、このセカイで一番の、大金持ちだぁ。だれにも、邪魔はさせない……」


第四話「ヒトノカタチシタ、ヒカリ」(前編)


〜慎哉の部屋・パソコン前〜

どうする?
・パソコンを起動させる
・考えを整理する

→・考えを整理する

幸助「えーっと……このゲームやってからみんなおかしくなっちゃったんだよなぁ……もう一回オレがやって、同じことが起きんのかな?」

しかし、その時に脳裏に浮かんだのは、あのときの金色のリンゴのことだった。
そして、この部屋で発動させた力のことも

幸助「ありえないことばっかりだよなぁ……」

しかし、その全ては、自分の妄想でなければ、決定的な現実であることには変わりない

正臣「こーすけくーん。そろそろ時間だよー」

幸助「げっ!しまった、考え事だけで結局何もしてないっ!!親父さんごめん、あと五分だけ!!」

店から呼ぶ正臣に大声で答え、幸助はおもむろにパソコンのボタンに手を触れた

幸助「やるだけやってみるかっ」

モニターが起動して、デスクトップ上には例のゲームのアイコンがある

どうする?
・クリック
・クリックしない

→クリック

幸助「これだな……」

幸助がアイコンをクリックすると、確かにゲームは起動するが、例のリンゴは現れない

幸助「んー……やっぱ出ないか……シンヤはあのリンゴ食っちゃったのかな?」

そのことに関しては、食べたかもしれないし、食べなかったかもしれない、という話は聞いていた

『俺があのゲームで覚えていることがあるとすれば、なんか凄く美味いものを食って、もう一度食べたいな〜、とかって思ったことだけだ』

幸助は試しに、少しゲームを動かしてみることにしたが、やはり何の変哲もないありふれた

幸助「これ自体は普通のゲームかぁ……」

しかし、妙なことに気が付いた。

幸助「……?」

パソコンの画面のステータスの部分に「Buy the Food」というバナーが付いている

幸助「何だこりゃ、食べ物の通販サイトかなんかかな?」

どうする?
・バナーをクリックする
・学校に行く

幸助「あぁもう時間ないなぁ……とりあえず……」

→・バナーをクリックする

幸助「これだけ、ポチッと。」

そうすると、食べ物の通販サイトと、その通販先の割引チケットなどがズラと並んでいる
しかも、そのバナーの売り路のほうには「RMTご利用ください」とか「アイテムを現金に」とか「学生ローン」などといったお金の工面方法が載っている
ちなみに、通販サイトは「ゲーム自体に標準装備」されているもので、後付のバナーではないことも分かった

幸助「このゲーム、フリーなのはこれでお金稼いでるってことかな?」

正臣「こーすけくーん!」

幸助「ん、あぁあっ!!やっべ!!」

さすがにもう出なければ遅刻してしまう時間だ。幸助は慌ててPCの電源を落とし、部屋を飛び出した


〜学校・幸助の教室〜

慎哉「お前、なにやってきたんだよ?」

幸助「あう〜……ちょっと調べ物〜」

慎哉「……おふくろさんの用事は?」

幸助「……え?あっ!!それはその……えっと……!!」

慎哉「お前、俺になんか隠してるだろ〜」

幸助「な、何を根拠にそんなっ」

慎哉「目が泳いでるぞ」

幸助「う……別にボタンなんか外れてないって……」

慎哉「なに〜(にやにや)」

幸助「あ、あぅぅ〜〜!!悪かったよ〜、オレもシンヤのこと笑えません〜〜……」

慎哉「あっはっは。よしよし、これからお前も風船デブの仲間入りだw」

幸助「う〜〜……」

などと喋っているところに、別の友人が割り込んでくる

友人「おい、お前ら、朝のニュース見たか?」

幸助「えっ、それってもしかして……」

友人「宮川先輩の話だよ」

慎哉「宮川先輩が、どうかしたのか? まさか太りすぎで動けなくなったとかw」

幸助「やっぱアレ、先輩だったんだ……なんかもうお肉の塊にしか……」

慎哉「って、マジかよ!!?」

友人「お前らも気をつけろよって話w」

幸助「自分の肉で窒息したらしい〜」

慎哉「だって、俺らが会ってから、まだ一ヶ月たってないよなぁ……」

慎哉が青ざめた顔になっている

幸助「やっぱゲーム漬けの生活が原因?にしても……行き過ぎだよなぁ」

慎哉「……俺、あのゲーム続けないでよかった〜」

友人「え? あのゲームって?」

幸助「知らない方がいいと思うっ!!」

慎哉「いや、バカ。被害にあったらかわいそうだろ。ちゃんと実情は教えておかないと」

友人「なになに、それ、どういうこと?」

幸助「信じてもらえると思うか〜?」

どうする?
・話す
・慎哉を黙らせる

→・慎哉を黙らせる

「ヘンに興味引いて、これ以上被害増えたらどうすんだよ〜」

慎哉「う……うん。分かった」

友人「んだよ〜、それー。おい幸助、おまえ勿体つけんなよ〜」

幸助「とにかく変なゲーム見つけても手を出すなって話だよ!!」

友人「なんだよ、わけわかんねぇ〜」

ということで、友人は去っていく

慎哉「お前〜」

幸助「何さー」

慎哉「この問題、俺たちが扱うには大きすぎるぜ。こう、警察とかさー」

幸助「んなこと言ってもオマエ、警察に何て言うんだよー?」

慎哉「あ、いや、その……んー……なら、忘れるか。俺もお前も、もうあんなゲームのことは忘れるって方向でさ」

幸助「それもヤだ」

慎哉「じゃあ、どうするんだよ!」

幸助「……オレが何とかする!シンヤをあんなにしたゲームなんだ。忘れられるわけないじゃんかよ……」

慎哉「俺も手伝う!」

幸助「いや、オレ一人でやる」

慎哉「幸助!!」

幸助「うっ」

慎哉「お前……俺のこと、なんだと思ってんだよ」

幸助「オレの周りでヘンなこと起きてんのに、巻き込みたくないんだよぉ……」

慎哉「……俺じゃ、だめなのかよ」

幸助「だめとかじゃないよ……でもオレの周りで起きたこと、オレにしか見えてないってことは、たぶんオレ以外の誰かが触れたらいけないことなんじゃないかなって……」

慎哉「わかった……もういい」

慎哉は背中を向けて自分の机に戻っていった

幸助「あ、シンヤ……」

その日、慎哉は一言も幸助と口を聞こうとしなかった


〜夜・幸助の部屋〜

どうする?
・これからのことを考える
・継子のことを考える

→・これからのことを考える

幸助(これで……良かったんだよな……オレ一人で、がんばんなきゃ……)

ぎゅるる、と腹の虫が鳴る

幸助「う……?おまえか……」

なんとなく、やさしい音がする

幸助「まったく、んな事言ってもなんも教えてくんないクセにさ……」(仕方なさそうに腹をさする)

そして、その夜は更けていく……


〜次の日〜

どうする?
・今日は学校休んで捜査開始
・今日は学校に行って慎哉に謝ろう

→・今日は学校休んで捜査開始

幸助「早いトコ片付けないとな、こんなワケのわかんないこと」

幸助は学校に仮病の電話をかけた受話器を置き、息を吐いた

捜査の方針は?
・まずは聞き込みから!
・現場百辺、ともかく事件現場に直行!

→・まずは聞き込みから!

幸助「とりあえず、他にあのゲームやった人とかいないかな?」

幸助はしばし考えた後、街で一番オタク臭の漂う大きなゲームセンターに足を運んだ

幸助「う〜、シンヤと二人でサボって来てる時にゃ平気なのに……」

一人では意外と心細く、周囲の視線を必要以上に気にしてしまう。

幸助はとりあえず、客の情報に詳しそうなゲーセンの店員に頭を下げた

幸助「あの〜、すみません……」

店員「はい?」

茶金髪に染めた、ロンゲの犬族の青年がこっちを見つめている

幸助「最近ここに来るお客さんで、dsmっていうネトゲにハマってる人とか心当たりないっすかね?」

店員「あー、dsm。知ってる知ってる。今朝のニュースで話題になった奴でしょ?」

店員「俺のダチも結構ひどい目にあってさー」

幸助「やっぱり!?あれってどういうことなのかな、オレの先輩や友達もおかしくなっちゃって……」

店員「いや、ここだけの話、なんかあれ、妙なサブリミナルが付いてるって話でさ」

幸助「さぶり…み……?」

店員「ネットでも有名なんだよ。dsmの板、すげー荒れるし。dsm厨もすげーうぜーし。あれ、マジでやばいって」

幸助「あのゲーム、どこが作ってるんです?」

店員「あー、えっと、フィーダーとかって会社だと思ったよ」

幸助「フィーダー、ですかぁ」

店員「なに、あんたもアレやってる人?」

幸助「あ、いや、オレはやりかけてすぐやめちゃったんです。ただ、友達が被害にあってるんで、なんか放っとけなくて」

店員「そっか。俺の友達も、金が工面できなくなって、部屋でひっくり返ってるところで発見されたからな……ゲームで稼いだ金とかアイテムをリアルマネーにして、んで、メシ食うような状態になったらしいからな

幸助「そのフィーダーって会社に苦情とか、調査とか行ってないのかな?」

店員「行ったって話も聞くんだけど、なんか裏金とか色々あるみたいだぜ」

幸助「そんな……」

店員「なんか、やばい話も結構聞くから、あんたも気をつけた方がいいよ」

店員は話をやめて仕事に帰っていく

幸助「……フィーダー、かぁ。夢追い人とかとどーいう関係なんだろ……」

どうする?
・調査続行、次はフィーダーを探す
・そのまえにご飯、なんか食べに行こう

→・そのまえにご飯、なんか食べに行こう

幸助「よし、フィーダーの連絡先を調べてオレが直接事情を……」

(ぐるるりゅりゅ)

幸助「……の前に……」

幸助はゲーセンの向かいのハンバーガーショップに目をつけた

幸助「腹は減っては何とやらだなぁ……」

情けなくお腹をさすりつつ、ゲーセンを出た


→中編を読む

戻る