第三話「choice」(後編)
〜その日の晩〜
どうする?
・寝ている慎哉の腹を揉むw
・おとなしく寝る
→・寝ている慎哉の腹を揉むw
(ごそっ……)
幸助「オレだって……こういうのは……キライじゃないんだよっと……」(そ〜〜〜っ)
慎哉は、パジャマから腹をはみ出させて寝ている。というより、すでにパジャマは慎哉の体型にあっていないようだ
息をするたびに、腹が大げさに上下を繰り返している
幸助「ふっふっふ……日頃のお返しだ〜〜!」
にんまりと笑うと、幸助は勢いよく両手を慎哉の腹に伸ばした
???「あなたは、何をしているの?」
幸助「わゎっ!?ごめんなさいっ!!!」
慌てて手を引っ込めたが、その声の主に幸助は目を見開いた
幸助「……って、え?」
いつの間にか、あの少女が窓の外に浮かんでいる
???「それが、あなたの望む世界?」
幸助「あ……あぁっ……う、浮いて……」
???「どうやら、あなたは道を選ばない人のようね」
幸助「宙に浮くアヤシい婦女子に言われたかないやい!」
???「浮いてなんかいないわ」
幸助「浮いてるじゃん!」
いきなり幸助の背後に少女が出現する
幸助「ひっ!!?」
???「私はその場と「繋がる」だけ」
幸助「……ちょっと待って、わかるように説明してよっ」
彼女は、右手を上げて、手錠が手首にはまっているのを見せた
そして、手錠に付いた鎖は、もう片方の輪ごと虚空に消えている
幸助「え……えぇ!?」
???「私は、あなたの「通学路」と繋がり「教室」と繋がった。だから私の「えにし」があなたとあなたを知る人と繋がったの。
今この場で、あなたの友達が起きれば、彼は私を見て驚く。でも、こうすると」
パッと幸助の目の前から姿が掻き消えた
幸助「わ!」
そして少女は窓の外にいた。
幸助「ゆ……夢でも見てんのかオレ……」
???「私は今外の空間に「えにし」を繋いだの。この電柱に止まる鳥に「えにし」を」
幸助「えにしって?」
???「あなたが私を覚えていられるのは、あなたが「ゆめかり」に近い存在だから。
「ゆめかり」の「えにし」は血よりも濃く、海よりも深い。簡単に言えば「運命」よ」
幸助「ゆめかり……」
幸助は動揺を抑えて少女に尋ねた。
幸助「なぁ、一つずつ教えてほしいんだけど。ゆめかりって何のこと?ゆめおいびとっていうのは?」
???「ゆめかりは「夢狩り」のこと。「ゆめおいびと」を狩る者のことよ。「ゆめおいびと」は……」
少女は瞳を伏せて、それから射すくめるような視線で幸助を見た
幸助「っ……」
少女の視線に圧され、肩をすくませた
???「夢を追うもの。その夢は不安定で、決して健やかには育たない。だから、私たちはそれを狩る」
幸助「オレが、その……夢狩りに?」
???「あなたは「ゆめかり」ではないわ。「さきみたま」が何を言ったのかは知らないけれど」
幸助「さきみたまってのは……こいつのこと?」(腹を示す)
???「……さきみたまは、誰にでもいる。その形や存在の示し方はさまざま。でも、あなたのさきみたまは、そこにあるわ」
幸助「オレ、あの時こいつと契約とか何とか……」
???「こうすけ。かぐらこうすけ。時が迫っているわ」
幸助「時……?」
???「あなたにはもう一つ、血よりも濃く、海よりも深い「えにし」が刻まれている。
ゆめおいびとが、あなたを、そしてあなたの大切なものを求めているわ」
幸助「だからさ、もっと具体的に言ってくれよ!いったい何が起きてるんだよ!?」
???「全ては、言葉では伝えられない。私は、あなたを救うためにいるわけじゃない」
どうする?
・追い払う
・名前を聞く
→・名前を聞く
それならば、と幸助は、強い視線を少女に返した
幸助「……あのさ、誰にでも具体的なもの、一個はあるだろ?」
???「……それは?」
幸助「キミから聞かれることもあるんだな、ほら。オレは幸助」
???「……継子(つぎこ)」
幸助「継子、ね」
継子「桂木継子(かつらぎつぎこ)、私を、この世に繋ぐ言葉よ」
幸助「覚えとく」
継子「かぐらこうすけ、明日、あなたに新しい運命がおとなうわ」
幸助「え……?」
それっきり、継子は消えてしまった
幸助「……桂木、継子……」
〜次の日〜
慎哉「おはよ〜」
幸助「う〜、おはよ〜……」
慎哉「なんだよ、やけに眠そうだなー」
幸助「あんまり眠れなかったんだよー」
慎哉「なんだよ。俺の部屋にはスケベ本とか置いてないぞw」
幸助「そんなんじゃねーってw」
慎哉「さて、そろそろメシ食いにいこーぜ!」
幸助「おー♪」
と、走り出そうとすると、慎哉のパジャマのボタンが「ぽん」とはじけた
慎哉「あ」
幸助「あ」
慎哉「あ、ありゃぁ〜」(さすさす)
幸助「おまえなぁ、気にしないのはいいけど、ちょっとはダイエット考えた方がいいんじゃない?」
幸助は拾ったボタンをじーっと見つめた
慎哉「あ、あははは、はぁ……お、俺今日からダイエットしようかな……」
たっぷりのウェストを見つめ、慎哉はがっくりとため息をついた
幸助「うんうん、日頃食べてるおやつを全部オレにくれたら痩せるぞ♪」
慎哉「……っよーし、やったろうじゃねーか。今日の朝飯もお前にやる!」
幸助「あ、それはダメ!」
慎哉「なんでよ?」
幸助「三食きちんと食べるのが基本だって母ちゃんがー」
慎哉「はいはいw」
幸助「あ、今マザコンとか思ったでしょ!?」
慎哉「おもってねーよw」
幸助「むぅw」
慎哉「ほら、さっさとメシ食いに行こうぜw」(ぽむん、と幸助の腹を叩く)
幸助「はいはいっ」
〜ということで、朝飯後〜
慎哉「げぷっ(腹をさすさす。すでに、パジャマは前開きになっている)」
幸助「うー……なんだかんだで食える食える……」
慎哉「お前の腹も、かなり危なそうだなw(嬉しそうに幸助の腹をさする)」
幸助「オレのは服が古いから!シンヤと一緒にしない!!」
どうする?
・そろそろ学校へ
・あと一個パンを食ってから
→・あと一個パンを食ってから
幸助「あ、パン一個残ってる」
幸助は思わず手に取ってしまった
慎哉「あ、俺が取っておいたのに〜」
幸助「シンヤさんはダイエットなさるのでは?w」
慎哉「う……わかったよ。コースケにやるよ」
幸助「あんがとー♪」
……ぷつん
幸助がパンを腹に収めたとたんに、なにか小さな音がした
幸助「……」
慎哉「ん? 何の音だ?」
幸助「さ、さあ」
幸助のズボンがどんどんゆるゆる落ちていこうとしている
幸助「……あ、えーっと、シンヤ、ちょっと何アレ、UFO!!」
幸助は青ざめた顔で窓の外を指差して注意を反らそうとした
慎哉「え? なになに!?」
そのスキにズボンを上げ、慌てて椅子に座り直してごまかす
幸助「あれ?見間違いかぁ」
すると、さらにぷつっ、という音と共にパジャマのボタンが(笑)
幸助「……はぐぅっ!」
慎哉「何だよ、いねーじゃん」
幸助「あああっ!!シンヤ!!」
慎哉「今度は何だよ」
幸助「きょっ……今日は……先に登校されてはいかがでしょーかっ」
慎哉「……なんだかさっきから、妙だな〜」
幸助「ちょっとオレはもう少しこのままでいたい気分で……」
慎哉「んじゃ、俺もこのままで……」
幸助「あああ!ダメ!!」
慎哉「何でよ?」
幸助「ボタンが、いやボタンはなんでもなくてっ!!その、ほら、えーっと」
正臣「ほらほら、二人とも何やってるの。もう学校の時間だよ。慎哉、こーすけくんはこれからちょっと家に戻るんだよ」
その様子を見ていた正臣が、のっそりと声をかけた
慎哉「えー? 昨日はそんなこと言ってなかったじゃん!」
正臣「昨日の晩にお母さんから連絡があってね。ちょっと用事を済ましてくるんだってさ」
正臣は幸助に軽くウィンクをしてみせた
幸助「……そ、そう!!だからシンヤ、今日は先に行ってて!」
慎哉は、なんとなーく疑わしそうな目つきを幸助に向けつつ、学校へ向かった
正臣「これでよかったかい?(にっこり)」
幸助「助かりました〜……」
正臣「別に隠すこと無いのに(笑いながら)」
幸助「シンヤの弾けたボタンをバカにした手前、言えないですってば〜」
正臣「こーすけくんも、だんだん立派なお腹になってきたしねぇ」
幸助「うう、親父さんまでそういうこと言う〜〜」
『……午後四時ごろ……自宅に……宮川隆さん(19)が……』
不意にテレビから、音声が流れてくる
幸助「!?」
正臣「どうしたの?」
幸助「宮川先輩……!?」
『詳しい原因は分かっていませんが、現在警察では、家族から詳しい事情を聴取すると共に、隆少年の意識回復を待って、話を聞きたいとしています』
幸助「何、これ……」
テレビ画面には、以前の宮川先輩と、ドアが切り取られて外に運び出された、デブデブの塊の映像が映っている
テロップには「引きこもり少年、太りすぎで窒息」なる文字がある
正臣「ああ、こいつはなんだか、タイミングが悪いニュースだねぇ」
幸助「ウソでしょ……」
何も知らない正臣は、のんびりと苦笑いしながらテレビを消す。
正臣「まぁ、こーすけくんは、さっきの子みたいにならないように……って、どうしたの?」
幸助「今の人、オレの先輩なんです……」
正臣「え? ……そうか、ごめんね。悪いこと言っちゃって」
幸助「ちょっと前までスポーツマンで、大食いなんか全然無縁で……」
正臣「……そんな子が、なんで?」
幸助「……」
あのネットゲームだ。幸助はチラッ、と、シンヤの部屋の方角を睨んだ
どうする?
・事件の捜査に乗り出す
・とりあえず、学校に行く
→・事件の捜査に乗り出す
幸助「親父さん、オレ、ちょっと調べたいことがあるの思い出したんだけど、シンヤの部屋のパソコン借りてもいいです?」
正臣「いいけど、どうするの? 学校は?」
幸助「どうしても気になっちゃって……」
正臣「分かったよ。でも、学校には遅れないようにね」
幸助「うん、すぐに!」
こうして、幸助は捜査に乗り出した。
自分の運命も未だに定まらないまま、未知の世界に足を踏み入れる、彼のまえに立ちふさがるものは、いかなるものであろうか。
真実は、彼の歩いた先に現れる
〜つづく〜