第三話「choice」(中編)


〜学校〜

慎哉「ふあぁ〜、ねむ〜」

幸助「オレも〜……」

教師「こら、お前ら、なにぼーっとしとるんだ」

幸助「あう〜」

慎哉「だって先生〜、昼メシの後って眠くならないですか?」

教師「分かってる。だが、こういう時になんとか起きている技能をつけるとだ、社会に出ても色々役に立つ」

幸助「たとえば?」

教師「会社で眠くなっても、何とか寝ないでがんばれる精神力が身に付くぞw」

幸助「眠い時にゃあ寝ないと、体に悪いっすよ〜」

教師「クビになって給料入らなくなってもいいなら寝ていいぞーw」

幸助「むー、とりあえず今はまだオレたち学生だから♪」

教師「ばかたれ、今のうちに身に付けておくから、あとで役に立つんだ。それが証拠に、俺だって居眠りして無いだろw」

幸助「はいはい、なるべく頑張りま〜すっ」

教師「さて、バカな話はこのくらいにして、38ページの頭から、相羽、読んでみろ」

慎哉「ほーい……『あはれはなびらながれ、おみなごにはなびらながれ』」

幸助「変な呪文……」

教師「呪文じゃない、詩だ」

教師「じゃあ、次は桂木、読んでみろ」

桂木「……『おみなごしめやかにかたらひあゆみ、うららかのあいそとそらにながれ』……」

その、桂木と呼ばれた女生徒を見て、幸助は驚くしかなかった

幸助「……!?」

灰色の猫族の少女は、異なった制服の中に混じって、平然と教科書を読んでいる

幸助「キミ、今朝の……なんで!?」(思わず席から立ち上がった)

桂木「『ひとりなる、わがみのかげあゆまするいしのうへ』」

最後まで詩を読み終えると、彼女はちらり、と幸助を見た。それから、胸元がちらっと光を反射したかと思うと姿を消していた

教師「どうした、神楽。次はお前が読むか?」

幸助「え、あぁ……は?あれっ!?」

教室中がどっと笑いに包まれる。教師もにこにこしながら教科書でぽこん、と幸助を叩いた

幸助「いてっ」

教師「さ、寝ぼけてないで続きを読め」

幸助「は、はい〜……えっと、何ページでしたっけ……」

教師「『をみなごしめやかに語らひあゆみ うららかの跫音空にながれ』からだ」

幸助「を、をみな、ごしめやかに、語ら、ひあゆ……」

教師「せっかく自分から立ったんだから、もう少しはっきりなw」

幸助「う〜……うららかのっ……」

そこで、もう一度爆笑が起こり、その日の授業の終わりのチャイムが鳴った


〜放課後〜

慎哉「あのくらいさらっと読めよw」

幸助「うー……なぁ、シンヤ」

慎哉「ん〜?」

幸助「オレ、頭おかしくなっちゃったのかな」

慎哉「……お、おい?別に、教科書ぐらい読めないからって、そこまで落ち込むこと……」

幸助「違うっ!」

慎哉「な、なんだよ、いきなり大声で」

幸助「最近オレの周りでだけヘンなことが起こるのに、シンヤも誰も覚えてなかったり、気づかなかったり……」

慎哉「……あ、あのさぁ、元気、だせよ。あんまり考えすぎるの、よくないって」

幸助「……」

慎哉「俺に、なんかできること、ないかな?」

幸助「……え?」

慎哉「お前が何悩んでるんだかわからないけど、力になりたいんだ」

幸助「シンヤ……」

慎哉「お前が見てるって言うなら、多分いるんだよ、その女の子とかさ」

慎哉「お前にしか見えない、ってことは、幽霊とか、そういうのなのかな?」

幸助「幽霊……っていうのとは違うと思う。だってほら!その女の子が『居る時』は、シンヤにも先生にも見えてたんだよ!」

慎哉「でも、俺も先生も覚えてないんだろ? そんなことってあるかな」

幸助「……先生は、普通に「桂木」って呼んでたけど、居なくなってすぐに忘れちゃったのか……」

慎哉「桂木ねぇ。うちのクラスにそんな苗字の奴いないしなぁ」

どうする?
・詮索を打ち切る
・もっと考える
・何か思い切った行動に出る(内容はプレイヤーが考える)

→・何か思い切った行動に出る(内容はプレイヤーが考える)

幸助「もしかしたら……!」

慎哉「どうした?」

幸助「いるかも。一番いろいろ知ってそうな奴。それも一番近くに……!」

慎哉「だ、だれだよ、そいつ」

幸助「こいつだよ」(ポン、と腹を叩いてみせた)

慎哉「はぁ?(きょとん)」

幸助「腹の虫。この前、何回もオレに何か伝えようとしたんだよ」

慎哉「……コースケ」

幸助「なに?」

慎哉「まずは、うちに行ってメシ食おうぜ。話はその後にしよう」

慎哉は幸助の腕を掴んでずるずる引きずっていく

幸助「え、あ、ちょっ、シンヤぁぁ……」


〜喫茶店「海の家」〜

正臣「あ、こうすけくん。いらっしゃいw」

幸助「親父さんこんばんわーっ」

慎哉「オヤジ、はらへったー!」

正臣「はいはい。もう準備できてるよ。僕はまだ店があるから、二人で食べちゃいなさい」

幸助「わーい、いただきます〜!」

そうすると、食堂にはものすごい量のにくやら野菜やらが置いてある

慎哉「うはぁ、美味そうw」

幸助「こんなに……大丈夫なの!?」

と、ホットプレートに火を入れる

慎哉「へーきへーきwそれに、うちのオヤジコースケの母さんに甘いから」

幸助「たはは……母ちゃんも喜んでるよ〜。今度映画に誘われたとかでw

慎哉「やっぱ、あれかな?」

幸助「あれって?」

慎哉「……デート、かな?(じゅーっと、肉を焼き始める)」

幸助「ん〜……」(微妙な表情で、肉をホットプレートに置いてゆく)

慎哉「お前、なんか親から言われてる?(肉をひっくり返しながら、たれを二人の皿に注ぐ)」

幸助「いや、何も。ただ、もうずーっと母ちゃんと二人だったから、そういう話になるとちょっとヘンな感じでさ」

慎哉「うちはさぁ、なんかオヤジがそわそわしてるんだよな。昨日だってさ、コースケの母さんから電話掛かってきたときも妙に裏声でさ」

と言いつつ、焼けた肉を二人の皿に交互に置いていく慎哉

幸助「親父さんもまだまだ青春だなぁ……あんがと♪」(もぐっ)

慎哉「……(もぐもぐ)でもさ、俺はなーんか、違和感あるんだよな……俺も別に、オヤジと二人の生活は気にならないし。
でも、なんか、いきなり……その、コースケが……」

幸助「オレが何?」

慎哉「あ、いや、なんでもない! ほら、肉食え肉!」(といって、どさどさ肉を置く)

幸助「な、なんだよぉ!!そこまで言ってそれはナシ!!」

慎哉「うるさい

幸助「む」

慎哉「ピーマンも食え! ピーマンも!」

どさどさとピーマンを無造作に皿に盛っていく

幸助「あう〜、ピーマンはいらない!肉だけでいい〜!!」

慎哉「にんじんもたまねぎも喰らえ〜」

幸助「おまえ、自分が苦手なモノを押し付けてるだけでしょー!?」

慎哉「うるさいなー、お前だってピーマン残すくせに〜」

幸助「これ全部食ったら教えてくれる?」

慎哉「……(無言でピーマンを口いっぱいにほおばる)」

幸助「……まぁ、いっか……」

幸助は諦めた様子で、皿に盛られた肉やら野菜やらを次々に口に入れていった


〜そして、食事の後〜

慎哉「げふっ(パンパンになった腹を抱えてひっくり返っている)」

幸助「も、もう食えないっ……」(ゴロンとその場に寝転がる)

慎哉「あ〜、冷蔵庫にプリンがあるんだけど、どうする〜?」

幸助「あ、食べる食べる〜」

慎哉「もう食えないんじゃないのかよw」

幸助「甘いものはナントカってね!」

そう答えた直後、部屋に運び込まれたプリンを見て幸助は青ざめた

幸助「こ……これはまた……親父さん手作り?」

慎哉「そう。俺が注文した「バケツプリン」なw」

幸助「無茶だ!」

その名の通り、小型のバケツにプリンアラモードが入っている感じだ

慎哉「まぁ、二人で食えってことだからw」

幸助「まぁ結局のところ食べるしかないワケなんだけどさぁ……(もぎゅもぎゅ)やだなぁまた太っちゃうよー(もぐもぐもぐ)」

慎哉「全然こまってないな、お前」(もりもり)

そして、二人のお腹はさらに膨れ上がったのだった(笑)

幸助「今度こそホントにもう食べられないっ……!」

慎哉「ぐ、も、もう腹が……」

正臣「おお、二人とも魚河岸のマグロみたいになっちゃって。まぁ、マグロと言うよりはマンボウだねw」

幸助「そりゃないです〜〜、せめてアザラシかトドあたりでどうか一つ」

慎哉「あんまりかわんねーだろ」

幸助「慎哉はマンボウで十分だけどなー」

正臣「あはは。ほらほら、トドの二人組、もう二階に上がって休んでおきなさいw」

幸助「は〜い、ごちそーさんでした!」


慎哉の部屋〜

ズボンから寝巻きに着替えてくつろいだ二人は、だらだらと漫画を見たりテレビを見てくつろいでいた

どうする?
・何か気が付いたことを聞く
・考え事をする
・もう寝る

→・何か気が付いたことを聞く

幸助「シンヤ、そういえばさ、この前のあのゲーム、あれからどうしたの?」

慎哉「ゲーム?」

幸助「ほら、例のネトゲだよ。シンヤがおかしくなっちゃった時の」

慎哉「……ああ、あれか。別に面白くないからやめた。中身もふつーだったし」

幸助「学校サボって引きこもるぐらいハマってたのに」

慎哉「つか、俺、そのおかしくなった時のこと、良く覚えてないんだけど、ホントにお前のこと殴ったりしたのか?」

慎哉は記憶がないながらも、すまなさそうな顔で幸助を見つめた

幸助「ん……確かに殴られはしたけど……」

慎哉「……その、ごめんな」

幸助「ううん、たぶんアレはシンヤじゃないと思う」

慎哉「……じゃあ、誰なんだ?もしかして、お前が見る女の子と、何か関係があるんじゃないのか?」

幸助「うーん……」

幸助は腕組みをして少し考えた後、脳裏に一つのキーワードが呼び起こされた

幸助「……ゆめおいびと」

慎哉「は?」

幸助「あの女の子も、コイツ(腹を指差す)も、ゆめおいびとに気をつけろって……」

慎哉「夢追い人、ねぇ。なんか、さっぱりわからん。そんなもんどうやって気をつけろって言うんだよ」

幸助「さあ?」

慎哉「もう寝ようぜ。明日も学校なんだし」

幸助「うん、寝てるスキにオレの腹揉むのはナシだかんな!」

慎哉「分かってるってw」


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