〜???〜

???「こうすけ……こうすけ……」

幸助「んにゃ…?」

???「こうすけ……」

幸助「ん〜……」

どうする?
・起きる
・眠る

幸助「あと五分だけ〜〜……」

→・眠る

???「……こうすけ」

声は幸助の頭の中にずっと鳴り響いている
聞いたことのない、しかしどこか安らぐ声

幸助「う、ん……誰……?」

???「ここだよ」

いつの間にか、幸助は何もないだだっ広い空間に浮かんでいた

幸助「ここは……」

???「こうすけ」

幸助が声の正体を探して辺りをキョロキョロと見回していると、いつの間にか天を突くような巨大な影が立ちはだかった

幸助「え……うわっ!!?」

???「こうすけ……」

その巨大な影は、優しく語りかけてくる

幸助「誰…?」

幸助はゆっくりと歩み寄り、影に覆われた顔を覗き込もうとした

???「もうすぐ、はじまるよ」

幸助「はじまる……?」

???「きみの、あたらしい、せかい」

幸助「何だよそれ……?」

???「きみは、ささげられたもの、だから」

幸助「ワケわかんないよ、だいたいおまえ誰だよ!?」

???「「ぼく?」」

幸助「うん」

声が急に世界全体に響くようになった

???「「ぼくは」」

翳っていた姿が、まるで幸助を押しつぶすようにのしかかってくる。

幸助「え、ちょっ、うわっ…!!」

そして、その顔は紛れも無く、幸助自身の顔だった

???「「ぼくはきみ」」

幸助「……!!?」


第二話「芽生え」(前編)


〜朝〜

その夢の余韻のせいか、幸助は汗びっしょりになって起き上がっていた

幸助「ゆ、夢……だよなァ……」

少し心臓が高鳴っているくらいで、自分の体には何の異常もない
もちろん、今のところ世界にも何の異常もない

幸助「なんだったんだ、ありゃ……」

そのとき、腹の虫がぎゅるる、と鳴った

幸助「う……はいはい、おまえは相変わらずでいいですね、っと」

ポン、と以前より張り出したお腹を叩いた


幸助「母ちゃん、朝メシできてる〜?」

春奈「あら、ずいぶん早いわね。今日はきっと嵐がくるわ」

幸助「なんか……ヘンな夢見て目覚め悪ぃの」

春奈「はいはい。そういう時は、母さん特製のホットミルク」

幸助「んわ♪ありがと〜!」

いつも通りの食卓。あの一件以来、母親は口うるさくやせろとは言わなくなっていた。
そのせいか、幸助の横幅はまた少し大きくなっていたりする

幸助「母ちゃん、そういえばちょっと困ったことが」

春奈「なに?」

幸助「学校に穿いていくズボン、その……ちょっと縮んじゃったみたいで」

春奈「……あんたねぇ」

幸助「あぅ〜!ごめんなさいっ!!」

春奈「(ふぅ)あんたも、だんだん父さんに似てくるわね……」

幸助「ん……」

幸助は不服そうに、ミルクの入ったカップを置いた

春奈「……幸助、何度も言うようだけど、あたしとお父さんとは……」

幸助「いい、わかってるから別に聞きたくないっ」

春奈「……わかった。さ、早くご飯食べちゃいなさい」

幸助「……うん」


〜登校中〜

慎哉「おはよ〜」

幸助「あ、おはよ〜……」

慎哉「どうした? また、なんかあったのか?」

幸助「いや、別に何もないんだけど、ちょっと寝起き悪かったりして……」

慎哉「(ほっ)そっか。んじゃ、学校いこーぜ」

幸助「おまえはいいよなぁ(ぼそっ)」

慎哉「あん? なんだよ、いきなり」

幸助「…親父さんと仲良くてってな」

慎哉「えー、別に仲良くなんてないって。この前だって、俺のとっといたチーズケーキかってにくっちゃうしよ〜」

幸助「はぁ…ごめん、今のナシ……行こうぜ〜」

慎哉「……うりゃっ!」(腹を揉む)

幸助「はうぁ!?ちょっ、しんやぁ!!」

慎哉「うりゃうりゃ!」(もみもみ)

幸助「やめ、みんな見てるだろーがっ!ってそこは弱いのwあぁぁっ!!」

慎哉「あはは。どーだ、元気入ったか?」

幸助「し〜ん〜〜や〜〜〜!!!」

慎哉「あははは」

慎哉は大笑いしながら、ダッシュで逃げていく

幸助「待てこいつ!!オレにも揉ませろ!」

慎哉「やだよ〜だw」

幸助「ちくしょ〜〜〜!!」


〜教室〜

最近はすっかり寒くなったせいで、教室の人間は外側の窓に近いところに居座って話をしている

幸助「で……シンヤよ」

慎哉「ん?」

幸助「おまえはなんでオレの腹で暖を取っているのだw」

慎哉「ああ、あったけぇw」

幸助「(ひそっ)ま、オレも暖かいけどさ……」

慎哉「だって、お前の腹って、最近また立派になってさぁ、保温力と言うか包容力というか、上がってんだよねーw」

幸助「おまえが言うなっ、おまえがっw」

慎哉「えー? だって、お前ってばもうひゃk」

幸助「しーーーーーーっ!!!聞こえたらどうする!!」

慎哉「なんだ、いいじゃんよ。コースケは小太りタヌキから大デブタヌキにクラスチェンジしましたってw」

幸助「うれしかないわ、そんなもん!」

慎哉「あはははw」

慎哉「……そういや、話は変わるんだけど、宮川先輩、覚えてるか?」

幸助「宮川先輩っていうと、去年卒業した……?」

慎哉「うん。二個上の」

幸助「それがどうかしたの?」

慎哉「この前、うちの店に来た先輩達が喋ってるの、偶然聞いちゃったんだけど……なんか、引きこもってるらしいぞ」

幸助「うそぉ!?あの人が!?」

慎哉「うん。俺も信じられなかったんだけどさ……どうもマジらしい。サッカー部の友達も、そんな噂聞いたって言ってたし」

幸助「でもあんな明るくて面倒見も良かった先輩がねぇ?大学とか上手くいってないのかなぁ」

慎哉「なんでも、ネトゲのせいらしいぞ」

幸助「ねとげって?」

慎哉「ネットゲームだよ。パソコンでやるあれ」

幸助「ああ、そういやクラスにも何人かハマってるやついるっけ。朝までやってて遅刻とか……」

慎哉「俺もやったことあるけど、まぁ、はまる奴ははまるんだろうなぁ」

慎哉「でも、宮川先輩って、そんなタイプだったかなぁ」

幸助「宮川先輩、思いっきりスポーツマンじゃん。休みの日は海かジムか山かって」

慎哉「だよなぁ」

幸助「オレも一時は憧れたんだよなぁ・・・あのスタイルで、おまけにイケメンときたもんだ」

慎哉「え、お前……そういう趣味がっ!?」

幸助「ちがっ!!オレのタイプはもっとふくよk」

慎哉「?」

幸助「あぁあ、何でもないっ!……ところで先輩のやってたゲームってのは?」

慎哉「えー、よく知らん。俺、昔ちょっとだけThe worldやってただけだし」

幸助「ふむ〜。でもあの先輩がハマるぐらいだし、すっげぇ面白かったりすんのかなぁ」

慎哉「そうだなー。分かった、俺ちょっと聞いておくわ」

幸助「うん、頼む〜」


〜帰り道〜

慎哉「コースケー」

幸助「おー」

慎哉「今日はどこ行く?」

幸助「んっとね、電気街の近くにできたシュークリーム屋さんが美味いって評判みたい」

慎哉「おっけーw そういや、例のゲーム、分かったぜ」

幸助「お、マジ!?」

慎哉「dsmって名前らしい。なんか、フリーのゲームなんだってよ」

幸助「フリー?タダってこと?」

慎哉「うん」

幸助「そんなの儲からないじゃん」

慎哉「いや、なんか、いろいろあるらしい。広告収入とか、もともとは業者じゃないらしいからな」

幸助「ふ〜ん、なんか怪しい気がするけど……」

慎哉「あやしいって、どんなw?」

幸助「胡散臭いってことだよ〜。タダより高いものはない!」

慎哉「古いなー、考え方がw」

幸助「正直、ちょっと興味はあるんだけどさ♪」

慎哉「そっか。んじゃぁ、やってみるかw」

幸助「ちょうど電気街だし、簡単に手に入るんじゃない?」

慎哉「いや、ソフトはダウンロードらしいぞ」

幸助「暖炉?」

慎哉「おまえ、パソコン持ってないんだっけ?」

幸助「だってオレも母ちゃんも別に使わないんだもん」

慎哉「じゃあ、できねぇじゃん」

幸助「しんや♪」

慎哉「なんだよ?」

幸助「最近新しいパソコン買ったんだって?♪」

慎哉「……おーまーえーなー」

幸助「ちょっと触ってみるだけだから。俺なんてどーせすぐ飽きちゃうし」

慎哉「わかったわかった。とにかく帰りに家に寄れよ」

幸助「わーい!さすがシンヤ♪」

などと喋っている時、傍らを過ぎていく者がいる
身長は175くらいはあるが、横幅も凄い。
しかも、片手に持った袋から取り出したケバブをむしゃむしゃほおばっている

幸助「ん……?」

慎哉「うわぁ……アメリカンサイズ」

幸助「あれ……」

慎哉「どうした? 変な顔して」

幸助「あ、ごめん。たぶん人違いだと思う」

慎哉「……変な奴。さ、いこーぜ」

幸助「う、うん」

どうする?
・やっぱり確かめる
・慎哉の家に行く

幸助「……こんなとこにいるハズないよな」

と振り返った時、その人物と目が会ってしまった。

幸助「う……」

→・やっぱり確かめる

慎哉「お、おい、どうしたんだよ!?」

幸助「……あの、すみません」

???「(もぐもぐ)はーい?」

幸助「あ、いや…やっぱ何でもないです」

???「……こーすけ?」

幸助「……!!」

慎哉「おい、どうしたんだよ?」

幸助「シンヤ、行こう」

慎哉「お、おい!」

幸助「いいから早く!!」


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